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Directed and Produced by
純谷吉松(Itoya Kichimatsu)


■2000年12月のニュース一覧
▼[2000.12.29]霞を食べて生き続けて
▼[2000.12.28]アナリストなき株式相場
▼[2000.12.27]カプラの戦ぐ風から
▼[2000.12.26]PSOへ,ようこそ
▼[2000.12.24]最期,に被害者になるのは音楽,の構図
▼[2000.12.22]ディスク革命の明日
▼[2000.12.21]人間なんて,簡単だ,ヘッヘッ
▼[2000.12.20]彼女に,幸あれ?
▼[2000.12.19]マ・ヤ・クに溺れさせろ
▼[2000.12.17]冬咲く徒花
▼[2000.12.16]ひらとはらと視界よ,拡がり
▼[2000.12.15]今,P2Pを求める,それは情欲と本能
▼[2000.12.14]失敗しない失敗するコンピューター
▼[2000.12.13]あたしになること
▼[2000.12.12]月詠の詩
▼[2000.12.11]この世界の価値とあなたの価値
▼[2000.12.09]赤いケーブルの魔法
▼[2000.12.08]Der apfel tanzt
▼[2000.12.06]ポルノ画像とメディア王の接点
▼[2000.12.04]デジタルテキストの価値
▼[2000.12.03]魔笛は吹くや
▼[2000.12.02]携帯ゲームの道先
▼[2000.12.01]ギガヘルツマックのために必要なこと

■2001年1月のニュース一覧
■2000年11月のニュース一覧


 
[2000.12.29]
  霞を食べて生き続けて


 ▼Vaporware 2000: Missing Inaction(WIRED NEWS)【英語】
  http://www.wired.com/news/technology/0,1282,40484,00.html


 人は霞を食べて生きていくことはできないって? いやいや,霞ほど甘く香り立つものはない。現実に見えてしまったものは,いつもつまらない。霞の中のものこそ,限りない希望と夢をみせてくれる。

 WIRED NEWSが2000年にもっとも熱心に待ち受けられた(そして霞と消えた)ベイパーウェアを紹介する。ネットスケープ6のように,出て来たはいいがまったくの期待外れだったものもあるが。8位はブルートゥース製品。トレードショーではたくさんの製品をみせられたが,あなたは1つでも買うことができた? 94年から開発されているっていうのに。5位はインテルのアイテニアムチップ。今年夏に出荷されるとしていたが,その開発の遅延は,まさにアイタニックの悲劇だ。4位はリナックスのカーネル,バージョン2.4。今年中,リーナスは間もなく間もなくと云ってきたが,結局どこにあるんだ? 1位は,マックOS X。あるユーザーは,もう待てないとビル・ゲイツ愛好家になってしまった。別のユーザーは云う。アップルはOS Xをすぐにリリースできる。キューブのような製品で倒産しなければ。

 ちなみにこのベイパーウェア賞,一昨年はウインドウズNT 5.0,昨年はウインドウズ2000だった。MSの3連覇をアップルが打ち破った,というよりもMSの候補だったドットネット(.NET)は,誰もまだ熱心に待ち望んでないためランク外だった,といったところ(^_^;)。

 2000年内に発売と云って,おいおいまだどこにもないよというものは多い。云われてみればマックOS Xもそうだったんだなと思い出した。まったく,ユーザーはいつからこんなに我慢強くなったものやら。特にゲームの発売日なんて伸びて当然となっている(今年のベイパーウェア賞にもゲームはいくつかランクインしている)。予定していた日に出ることなんて,奇跡だ。まぁその分,噂やら流出したスクリーンショットやら,なにかと楽しませてもらっているから,いいんですけどね。と,いうことで,ベイパーウェアを作れる会社こそ,魅力的。ちょっとだけ名前をあげれば,アップル(キューブブックは? マーキュリーは?)やセガ(サクラ大戦3は? シェンムー2は?)には,来年もたくさんのベイパーウェアを作って欲しいものです(^-^)。




 
[2000.12.28]
  アナリストなき株式相場


 ▼任天堂が急落、セガがストップ高−任天堂のセガ買収報道で(Bloomberg.co.jp)
  http://quote.bloomberg.com/fgcgi.cgi?ptitle=title&T=japan_news_story.ht&s=AOkmUDhxZlEOTVpOw


 任天堂には,ゲームキューブが,そして世界最大シェアを持つゲームボーイとその後継のゲームボーイアドバンスがある。ネットワーク志向のソフトウェアの,堅実な好調さが読み取れるこの年末のセガの動きも明らかだ。まともなアナリストならそれをきちんとわかっているはず。そうか,日本にアナリストなんて者は,1人もいないんだったね。ただの能無し仕手師たちか。

 任天堂社セガ社買収で交渉中とする27日付のニューヨークタイムズ紙の報道が伝わったのは,午後2時ごろ。セガ株は一気に前日比100円ストップ高の1,054円に上昇した。東京証券取引所は情報内容を確認する必要があるとして,セガ社株の売買を午後2時20分から停止した。任天堂とセガは報道内容を全面否定した。

 降って沸いたような買収騒動。最近の両社の動きを知っている人ならあっさりガセとわかるネタだが(NYタイムズだし),PSOの存在も知らない人たちが動かしている株式市場の動きは見ていておもしろ過ぎた。まるで喜劇だ。記事中のアナリストのコメントも的が外れている。任天堂は経営判断を誤ったって,セガ買収など考えない。今注力すべきはそんなところでないのは,素人だってわかる。

 任天堂の広報は,このニュースを知らされて苦笑したという。セガの株価が上がるのはまぁ安易な反応として理解に堅くないが,任天堂の株価の下落は,まじめにこの噂を取り上げている証拠だった。海外,そして日本でのハイテク企業株の続落や,今回のこのような事態をみるにつけ,まともな視点と十分な認識を持っているアナリストの少なさは目に余る。特に,日本には1人としていない。お粗末な話だ。




 
[2000.12.27]
  カプラの戦ぐ風から


 ▼パソコン通信「PC-VAN」,2001年4月で15年間の歴史に幕(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/bursts/0012/25/pc-van.html


 ノイズに細心の注意をしながら,音響カプラを受話器にセットする。漏れ聞こえる通信音が,そよぐ風のように,あかしま風のように,鳴る。やがて,モデムの通信速度は,1200bpsから2400bpsへ,さらにぐんぐんあがっていく。モデムは,NECのコムスター2415。プロトコルは,XMODEMからQVへと。その歩みは,やがて世紀末のビッグバンにも繋がっていく…。

 NEC社は,同社のパソコン通信サービス「PC-VAN」の企業向けサービスを2001年4月で終了すると発表した。すでに個人向けサービスは,2月で終了がアナウンスされており,15年間の歴史に幕をおろすこととなる。

 もうひとつの,後発ながら一気に会員数トップの座を奪い取ったニフティ同様,商用パソコン通信に新世紀は来ない。ほんとに一瞬でインターネットに取り込まれてしまった。日経MIX,ASCII-NET,PEOPLE…,あの時のモデム音を,聴くことはもうない。それらのニフやバンといった通信は,中央による管理によって秩序を維持していたが(基本的にはオペによるユーザーサイドの自己管理だったが),それでもなぜだかバンは争いやもめ事,罵倒合戦みたいなことや,著作物の無断転載などなど,イリーガルな特殊な秩序と雰囲気が確立していた。裁判沙汰も多かった。もっとも有名なのは週刊文春に対する名誉棄損訴訟で,全面的な謝罪広告を掲載させたことか(参考リンク)。とにかくそんな秩序が,心地よいと感じる人も多かっただろう。

 1箇所に集うカタチのパソコン通信から,分散と偏在による現在のインターネットへの変遷は,ある意味劇的な変化だった。通信のフォーラムは,過去から現在へとメッセージが下っていくが,インターネットの掲示板は最近から過去へと下がっていく,すなわち違う時系列を持つ。これも大きな違いだ。さらに,ソフトウェアのインターフェイスが格段に整ったことで,インターネットは通信の持っていたマイノリティさを捨て去った。だが,そんなに違いがあっても,変わらないものも多い。2ちゃんねるなどのコミュニティに,草の根ネットのような匂いを感じることは多い。プロトコルは変わってしまったが,そこにあるものは変わっていないのかもしれない。失われた大陸都市からの風は,今もここを駆け抜けている。




 
[2000.12.26]
  PSOへ,ようこそ


 ▼セガ、「ファンタシースターオンライン」プレイ中の画面写真を掲載可能な掲示板を開設(Impress GAME Watch)
  http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20001225/sega.htm


 お正月,どこにも行くところがないという人には,とっておきの,尊き場所がある,マヂでマヂで。PSOの世界へ,ようこそ。

 セガ社は,16日に発売したドリームキャスト用ソフト「ファンタシースターオンライン(PSO)」で,ゲーム画面をセーブできる機能を用いたビジュアル掲示板を開設した。21日のサービス開始時に見られたサーバーの不具合は,23日のメンテナンスで改善されたとしている。

 と,いうことで,PSOのファーストインプレッションから。私は最近のRPG(FF9とかDQ7とか)は全然やってないし,アクションも苦手だが,それでも面白いと思えている。今もやりたくてやりたくて(^_^;)。いちばん強く感じるのは,キャラとのシンクロ度合の高さ。ベーシックなアクションRPGなので,操作に慣れるまではちょっとコツが必要だが,それさえ越えられれば,ホントに自分の仮の姿になってくれる。本来,2D・3Dなどのビジュアルは想像力を損なってしまうので,Wizのようなビジュアルのない方がよいと思っていたが,PSOはそれほど違和感がない。それはキャラ作成時の設定の豊富さにもよるのだろうが,それに勝る世界観の自由度の高さはステキだ。決められたストーリーの上をたどるだけでもないし,ネットワーク上で,自由にパーティーを組めることからもいろいろな展開が考えられ,そのシステムを積極的に活用しようというふうに作られている。この世界で,自分がどういう行動をとるのかは,ホントに自由なんだ。すでにビジュアル掲示板には100以上もスナップショットがあがっている(撮影の仕方)。何百万人が集っても決して同じスナップショットはない。自分にしかない大切なものを,拾うことができる。

 SFが好きな人なら,そのとてつもなくかっこいいSFチックなシップ内の風景だけでも楽しい。シンクロ率の高さから,ほんとにSFの世界に自分がいるような感じが味わえる。ドラクエにしてもFFにしても,現在のRPGは,どこかリアルっぽさから逃げなければ,まともにRPGとして成り立てずにいるのに,PSOはそれは力として取りこめている。それはとても偉大なことであり,そんなものを作り上げた人たちに,畏敬の念はやまない。ということで,私のロボメイドは今日も冒険に出かけるのでした(^_^;)。




 
[2000.12.24]
  最期,に被害者になるのは音楽,の構図


 ▼個人サイトでの楽曲利用,MIDIユーザーの猛反対も文化庁が認可(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0012/22/jasrac.html


 駅前でギタリストのお兄さんに伴奏を頼んで歌いだす彼女。美しい音楽。心を洗う音楽。その前に申請書と使用料金の提出を求める人物。最後の時,音楽は,被害者。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が,文化庁長官に申請していたインターネットでの音楽配信についての使用料規定が,一部修正の上認可された。個人サイトでMIDIデータを利用する場合も,1曲につき1,200円/年,150円/月の料金が徴収される。

 おおむね,JASRACの発言には感情的反感が含まれており(音楽利用者は権利侵害者であるという前提が強い),一般的なユーザーとの間で折衝が持たれる雰囲気もなく,妥協点もない。喧嘩別れしかない状況を作っているのは明らかにJASRACだが,あとになって残っているのは法規制だけだ。そして使用料を払わずにMIDIをアップロードしたものは,犯罪者となる。JASRACには「(私が管理している)音楽はどんな利用方法であれ,タダではない」という基準しかなく,ユーザーが,「MIDIはまんま複製したMP3と違う」とか,「定められた利用料金額が出てきた基準とその使用方策が明確でない」とか云っても,さっぱり話が噛み合わない。

 ただでさえJASRACの発言にあるように「MP3は違法」という認識があり,この申請認可でMIDIも勝手にアップデートすれば違法となる。この世界にある,すべての,すべての音楽はアングラになればいいという意見もある。私はそうだって別にいいと思うが,ギスギスした音楽しかない世界というのは,不幸であることは確かだろう。そもそも根本的な問題として,今後の社会にJASRACという著作権管理団体は必要なのか,と疑問を挟んでもいい。だが,まぁそれは著作権所有者が声をあげることで,ユーザーの声は遠く届かない。とりあえず,ユーザーとの間に差異を残し,事実上,JASRACの案に合意しているネットワーク音楽著作権連絡協議会から脱退した,SMEやAVEXなど大手レコード会社との間に軋轢も残している(Impress INTERNET Watchの記事)今回の認可が,「音楽」にとって,いいものではない。




 
[2000.12.22]
  ディスク革命の明日


 ▼高速PCにディスクは追いつけるか(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0012/20/e_ata.html


 謎に満ちた新興企業,という代名詞は,以前はトランスメタのためにあった。順調にテクノロジー企業として孵化したトランスメタの代わりに,今,その代名詞を冠している企業がある。カンナ社。どこか東洋的な響きを持つ,クパチーノの一角にあるというこの企業が,ディスク,を変革させようとしている。

 シリアルATAワーキンググループがハードディスク,CD-RWドライブなどを接続する新しいインターフェイス規格「シリアルATA 1.0」のドラフト仕様を公表した。このデバイス側(ディスクドライブ)の強化は,ホスト側(PC)のパフォーマンス強化にも繋がる。採用製品は2001年末に登場する。

 カンナは,新しいハードディスクを造っているという。謎だらけだが,伝えられる噂によると,そのハードディスクは,ネットワーク上に無限のディスクスペースを持つことができると云う。そして,ローカルにはそのネットワークディスクのキャッシュ機能と,他に類を見ない情報圧縮技術を持っている。トランスメタのクルーソーがコードモーフィング技術などでチップに大変革をもたらしたように,このハードディスクも,既存のハードディスクの存在を一変させる。

 そのキャッシュ技術と独自のプロトコルでシリアルATA以上の速度を実現し,ローカルの650KBのディスクが,ネットワーク上のディスクとやり取りし,圧縮された情報を常にやり取りする。ローカルのディスクにアクセスする以上の遅延が生じることはない。ネットワーク上のディスク容量は,オンラインでいつでも容量の拡大を申し込める。もちろん無制限だ。シリアルATAなんて,たいしたことない。明日,ハードディスクの,革命が起きる。




 
[2000.12.21]
  人間なんて,簡単だ,ヘッヘッ


 ▼遺伝子研究にIBMの超大型スパコン(CNET Japan)
  http://japan.cnet.com/News/2000/Item/001219-2.html


 人間? 人間のことについてわからないことなどない。遺伝,感情,構造,なんでも私が解き明かすことができた。と,彼は云った。真摯に,篤厚さを感じさせる,まなざしで。だが,その後で,急に表情を変え,嘲るように云った。「人間なんて,簡単だ,ヘッヘッ」。

 ニューテック・サイエンス社は,ヒトゲノム研究のためにIBM社からスーパーコンピューターを購入,研究者たちに貸し出す。IBM社の声明によると,この製品は政府以外が所有する最速のコンピューターとなり,1秒間に7.5兆回の演算を行う。

 このスーパーコンピューターは,世界最速のASCIホワイト(過去記事)に次ぐ性能を持つという。ヒトゲノムとスパコンの結びつきの強さは,記事にある通りで,それにネットワークを利用した共同作業と遠隔利用がさらなる力を与える。もっとも偉大な研究者として,スパコンは,無限の能力を示す。

 もし,人間以外に意志を持つ生き物がいるとしたら,真っ先に研究対象とするのは,「人間」という生き物だろう。人の能力では理解しきれぬ存在としてある人間が,白日の下に引きずり出されるのはいつのことだろうか。そして引きずり出すのは,誰だろう。当然それは,ASCIの子孫たちとなるのだろうし,すべてを解き明かされた人間は,銅線の張るチップの知識の下で生きることになる。これは予言ではなく,すでに引かれたロードマップだ。人間を嘲り倒すために,進化するコンピューターもある。それは決してうがった見方をしているのではなく,「真摯な歴史」と同義だ。




 
[2000.12.20]
  彼女に,幸あれ?


 ▼「親密な」メールをばらまかれて有名人に(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20001219205.html


 「あたしはいつでも飲んであげたいわ,癖になりそう」「いつもぢゃ困るな」。そんなメール,転送したくなるよ,ねぇ?

 スワイアさんは今週,イギリス中の有名人となった。ボーイフレンドが,彼女との間で交わしたオーラルセックスに関するメールを,メール仲間に転送し,数時間で世界中に広まったからだ。最初にこの話を取り上げたレジスターは,でっち上げだと結論づけたが,各メディアは大きく取り上げている。

 笑かしてもらいました(^_^)。CNN.co.jpの記事によると,世界で1000万人に読まれたとのこと。1000万人に読まれるべきテキストなんて,メッタヤタラとないものだが,まだこの拡散は続きそうで。BBC NEWSの記事では,彼女はまだ行方不明で,家族は当惑しながらインタビューに答えていること,最初にこのメールを広めたノートン・ローズ法律事務所の従業員5人は,週明けからの仕事があるかどうか微妙だということを伝えている。まっ,そうは云っても職場は「法律事務所」なわけで解雇は当然,という雰囲気らしい。ご愁傷様。その行方不明のスワイアさんには,複数の男性誌がセックスコラムニストとしての席を用意しているなんて話もあって,…笑えるなぁ。

 だが,自分が送ったメールがどこに転送,回送されているかなんてわかったもんぢゃない。どうでもいいようなメールがチェーンメールとなるように,彼女と繋がっているメールは,他のすべての人にも繋がっている。昨日の夜に書いたハガキは,朝読んで赤面してゴミ箱に捨てることもできるが,メールはすぐに送れちゃうのが罪といえば罪。まっ,でっちあげにしてもなんにしても,この世界の癖を知り尽くしていたスワイアさんに,幸あれ。




 
[2000.12.19]
  マ・ヤ・クに溺れさせろ


 ▼セガとACCESS,情報機器向けネットゲームプラットフォーム開発で新会社設立(ZDII)
  http://www.zdnet.co.jp/zdii/0012/18/hn_002.html


 まるで人肌,まるでアクセラ。溺れていくよ,踊りてゆくよ。眠れない,眠らない。

 セガ社アクセス社は,ネットワークゲーム用のウェブブラウザを開発する新会社「セガ・アクセス」を設立する。新会社は,マルチプラットフォーム向けのネットワークゲームをメインに,ミドルウェア,ライブラリ,通信モジュールを開発する。

 まぁた聞いたこともない会社と提携とかするらしい(Nikkei BizTech NEWSの記事)と思ったらそれはガセだったようで…(セガのニュースリリース)。それにくらべたら,指向性のはっきりしているこっちのニュースは価値がある。とかく…,ファンタシースターオンライン(PSO)が,かなり評判高い。ぐるぐる温泉に続く,ネットワークであることの意味を存分に持つ,ある意味で,今のセガを表す「正直な」ソフトだけに,その成功は大きな意味を持つ。デバッグも兼ねたトライアル版の好評は,フタを開けてみるまでわからないネットワークゲームの,ゲーム好きの人たちに対するいい宣伝材料となった。あまりゲームのことに興味がない人向けには,一般紙へのパブリシティが,いいランク付けとなっている。あとは,発売と同時に,もう一押し。

 引きこもりだのオタクだのジャンキーだの,まぁなんと呼ぼうがなんでもいいが,ネットワークという麻薬の中毒性も,また格別だ。思考力の欠如に溺れるように,終わりのない悦楽に溺れるように,ネットワークにずぶずぶと溺れていくのは心地よい。まして,それがゲームだったら,まさる快楽はない。セガの道は,PSOで固められる。幾万人もの社会生活をぶち壊すほどに,その麻薬に浸らせておくれ。世界を夢魔に,支配させよ。それができる力は,セガにしかないのだから。(どうでもいいが,こちらのドリキャス一本道もウレシイの心(^_^))




 
[2000.12.17]
  冬咲く徒花


 ▼3dfx,会社解散し資産をNVIDIAに売却へ(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0012/16/b_1215_01.html


 勝ち組と負け組がはっきりとするのに,時間を必要としない。この業界では,ひとつの失敗が,わずか数ヶ月の時が,「生」と「死」をわける。そして死すべきものには,別れの言葉も与えられない。かつて,革命を打ち立てし者の上に徒花が咲く。

 3Dグラフィックチップ「ブードゥー(Voodoo)」を生産していた3dfx社は,資産の大半をライバルのヌビディア社に売却して,解散することになった。ブードゥーはかつてない性能のチップとして登場し,業界を革新したが,STBシステム社買収によるグラフィックボード市場参入という経営判断の失敗で,ヌビディアやATIテクノロジーズ社に差を開けられた。ブードゥーはリテール市場では今も売れ筋だ。

 ブードゥー2が世に出たのが97年だった。そうか,まだ3年しか経っていないのかと思い返す。ブードゥー2はグラフィックチップの爆薬となり,価値観を一変させ,市場を作ったと云ってもいい。ただその爆薬の衝撃の大きさは,自らも傷つけた。グラフィックボード市場への参入という大いなる失敗もあり,ライバルであるヌビディアに圧倒的に差を付けられ,ATIにさえも後塵を拝することになる。だが,それとて,ここ1年の話だ。そして,コアテクノロジーとともに,「3dfx」「ブードゥー」という名前(意匠権と使用権)さえも,ヌビディアに買い叩かれた。ヌビディアがブードゥーブランドを使うということは,あまり考えられないので,勝ち組と負け組を明確にするためのヌビディアの非情なまでの処置ともいえる。

 OEM向け市場を持たず,個人向けリテール製品のみで生きてきた3dfxにとって,昨今のPC業界全体の低迷も最期の痛手となった。その点では,アップルを始めとする昨今の業績見直しをしている企業ともリンクする。そして日本でも,ビデオカードやCPUアップグレードカードを出していたインタウェア社が倒産というのが伝えられた(MacWIRE ONLINEの記事)。マックユーザーにとっては大きな痛手だ。3dfxもインタウェアも,ともに製品は市場にあり,実際にはその開発元がもうこの世にないというのが,不思議な感覚だ。…非情だなぁと,冬の風の中で思うのでした。




 
[2000.12.16]
  ひらとはらと視界よ,拡がり


 ▼本邦初公開! 世界に2台しかない900万画素の液晶ディスプレイ(ASCII24)
  http://www.ascii24.com/24/news/hard/article/2000/12/14/print/620906.html


 人間ほど,視界の周辺に意識を配らない動物はないという。他の動物であれば,敵への警戒心から視界の隅に動いたものでも的確に認識するのに対して,人間は目の前ばかりを見ている。そして視界はどんどん狭くなっていく。だが,視界を広げることもできる。どんどんと拡張する視界。それは,人間を他の動物よりも優位に立たせるかもしれない。

 IBM社は14日,量産前の高解像度液晶ディスプレイを展示した。この液晶ディスプレイは,22インチで900万画素,3840 x 2400ドット(QUXGA-wide)を表示する。この高解像度ディスプレイは世界に2台しかないそうで,あまりの高精細さに,ディスプレイモニターに映し出されたものが紙のように見える。

 視界が広いこと,多くのことを一目で見渡せることは,生きるうえで有用なことだ。だが,3840 x 2400ドットという解像度は,見てみないことには想像がつかない。ちなみに,今ご覧いただいているこのウェブページは,横幅600ピクセル(ドット)となっている。←から→の紺色の部分が600ピクセルだから,この幅の5倍以上を表示能力として持つ22インチモニターとなる。人間の160度の視界よりも,広そうぢゃないか?

 いつの日かモニターは,人間の前に鎮座するものから,人間の周囲を取り囲むものへと変わる。360度,取り囲んで,人間のもうひとつの視界を形作る。1024 x 768あたりが大勢を占める現状は,まだその中に見ているものを別世界にしか映さないが,人間の視界の範囲を超えたとき,そこはひとつの世界となる。一度広がった視界に対して,相変わらず狭い視界しか提供できないリアルは,限りなくつまらないものとなる。視界を広く持て。それが,未来を有意義に過ごすための,メッセージだ。




 
[2000.12.15]
  今,P2Pを求める,それは情欲と本能


 ▼倒産したスカウア社の資産が競売に(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20001214105.html


 気持ちと気持ちが,サーバーを通さずに繋がる,ピアトゥピアで。肌と肌がピアトゥピアで繋がる。唇と唇がピアトゥピアで繋がる。それは,気持ちいいこと? 情欲たること?

 ピアトゥピア(P2P)ファイル交換サービスを行っていた倒産したスカウア社の資産競売が行われ,リキッドオーディオ社リッスン・コム社との競り合いを経て,900万ドルでセンタースパン社が落札。同社はスカウア社の技術を利用できるようになったが,スカウアを廃業に追い込んだ著作権侵害の訴訟問題に直面することにもなる。

 リキッドやリッスン・コムなどが,もしスカウアの技術を手にしていたら,それこそナップスターとベルテルスマン(過去記事)のような音楽業界への新たな秩序の発端となったのだろうが,センタースパンが落札したことで,やや温度差を感じる展開となっている。センタースパンはソケットというオンラインゲームユーザー向けのチャットソフトで,ファイル共有機能を提供しており,スカウアのプロトコルを付加することで,メディアファイルも扱える,より強靱なソケットのバージョンアップを行うだろう。だが,まともに進めば,スカウアと同じ道をたどってしまう。さてさて。結局はナップスターを中心に回り始めるだろう音楽業界同様,スカウアの力をこのまま沈めてしまうのはもったいない。ファイル共有と,わずかな,媚薬があれば,世界は変えられる(過去記事),センタースパンは,その馨しさを持ちあわせられるだろうか。

 パソコン通信が一元化されたサーバー文化であり,インターネットは多元化されたサーバー文化だった。でも,結局はサーバーへのコンタクトに過ぎない。それがある日,個,へのコンタクトに変わる。メッセージも,ファイルも,情報も,すべて,なんの仲介物を通さずにコンタクトされる,コンタクトする。それが進化してきたネットワーク・マップの最終形態だ。まぁ実際には,個々人がネットワーク上のサーバーとなる,ということだが。そしてそれは,とてつもない気持ちいい繋がりかもしれない。なにも間に入ることなく直接,直接,繋がる感触。それを感じるから,私たちはナップスターやスカウアを求める。それは,云わば,本能として。




 
[2000.12.14]
  失敗しない失敗するコンピューター


 ▼Can NASA build a crash-proof computer?(ZDNet News)【英語】
  http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2663641,00.html


 苦さを知らぬ者は,甘さを感じられない(独逸の諺)。災難こそ,機会を変えるチャンスだ(ジョン・D・ロックフェラー)。失敗こそ教育だ,思考あるものは失敗から多くのことを学ぶ(ジョン・デューイ)。困難にあったときにそこで倒れてしまうこと,それがあなたのいちばんの弱さ(旧約聖書)。コンピューターとて,同じこと。

 米国航空宇宙局(NASA)は,カーネギー・メロン大学と協力し,まったく障害の発生しないコンピュータの構築を目指すコンソーシアムを設立する。この「クラッシュしないコンピューター」の開発は,テクノロジー企業にとって重大なこととなる。それにより改善される信頼性によって,ネットワークから宇宙開発,空港機管制などで,すべての開発を次のステップに運ぶことになる。

 クラッシュしないコンピューターというのは可能なのだろうか? ミスをまったく犯さない存在。どんな状況でもパニックを犯さない存在。どのような予測不能の事態でも解決し処理を続行できる存在。ハードウェア的に寿命のそのときまで,その状態を保つ続けるということ。そんなものを,さて,3歩進むと2歩下がるような失敗を繰り返す人間が作れるのか?

 このコンソーシアムにはコンパック,ヒューレット・パっカード,SGIからMS,アドビ,サン,ノベルなども名を連ねている。はたしてどのようなコンピューターとなるのか。で,そのもっとも近い存在としてあるのが自己を修復していくシステムだ。すなわち,持っている特別な機能は,自分に起きたトラブルを明確に認識する機能。認識して,それを2度と起こさぬ解決策を見つけ,それを実行する。早い話が,失敗しても1度きり,というシステムで,失敗をして,失敗をして,失敗しなくなるというもの。そんなの「クラッシュしないコンピューター」ぢゃないぢゃないかって? そう,そんなのを作れるとしたら,それは神でしかないんだったら。




 
[2000.12.13]
  あたしになること


 ▼ネット上における匿名性確保の標準作成に第一歩(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20001212303.html


 誰でもないあたし。誰にでもなれるあたし。誰か,であるあたし。誰か,でないあたし。あたしになる。あたしの思う,あたしになる。

 研究グループ「ニムIP」が,ネット・ユーザーのための,発信者の追跡が不可能な通信とウェブ閲覧の標準プロトコルの考案に向けて,会合を開く。特定の企業製品やサービスに縛られず利用できるプロトコルの作成となるが,情報を秘匿するための帯域幅とセキュリティーの兼ね合いが大きい問題だ。

 人は,いつしか,ネットワークで知りあった相手の,リアル・ワールドでの姿を想像する。顔形,性格,職業,趣味,服装,その他,もろもろの情報を欲する。それは,云わばリアルの,くせ,みたいなものだ。相手のことを知ろうとしたら,そんな情報を集めにかかる。そんな情報しか集めるものを知らない。だが,そんなものを知らなくても,意志の疎通が可能となり,それ以上のやり取りが滞りなく行われることだってある。本当に大事なのは,相手の考えていること,意志,興味,思考,嗜好,相手の言葉,そしてそれを丁重に受け止めていくこと。そんなに大事なものがあるのに,リアルのことばっかり考えているなんて,愚かなことだ。

 リアルでは,自分が,他人が考える自分になっていく感覚が強い。社会の中で,役割が与えられ,またはおしきせられ,そのワダチに沿って進む自分がいる。べつに,本当の自分がどうだとか,自分探しがどうのとか云う気はないが,この地,ワイヤードでなら,あなたはなんにだってなれる。なりたいものはなに? テレビドラマのような悲劇のヒロイン? 14歳の,殺人犯? 自虐に苦しまず天使のように人に接する賢者? 自分を,ボクと呼ぶ女の子? 自分を作るのは自分でしかない。そこで作られた自分は,嘘,ぢゃない。だって自分が決めた自分なんだもの。求めている自分があるんだったら,この地で生きていけばいい。そのためにも,愚かにリアルを求める人たちは,遮断してもなんの問題もない。




 
[2000.12.12]
  月詠の詩


 ▼Cube portable to be a "subnotebook's subnotebook"(Mac OS Rumors)【英語】
  http://www.macosrumors.com/


 見上げると満月。月だけがみていた。満月よ,お前が次に昇るとき,その月光に照らされている,桑港の机の上に,思いを馳せて。

 もしこの長年のアップル情報筋の情報が正確であるなら,アップル社は長年求められてきたサブノートブックを製造中のようだ。それがキューブブックだ。キューブブックは,ワイド液晶スクリーン,CD-RWかまたはCD-RWの機能も持つDVD-RAMドライブと,メディアオーサリングツールを持ち,大きさは横幅はパワーブックとほぼ同じ,奥行きは半分強,厚さは1インチぐらい。生産がうまくいけば,マックワールドエキスポ・サンフランシスコで,このウルトラポータブルをみることができる。

 ●アップル起死回生の扉は,開けられるのか。はるかずっと昔から,月の陰に隠されていたかのように,すぐそこにあって,でもいまだ日の目を見ぬ,禁断の地,それがまったく新しいマックノートだ(過去記事)。だが,月の裏側をみた人間なんて,まだ誰もいないんだよ。●続く業績の低迷は(過去記事),たとえばあの日,iMacでぶち破られたような,なにか,が必要なのだ。そのブレークスルーを作るのは並大抵のことではできない。iMacは,価格も,デザインも,ムーブメントも,すべて一転させた。キューブブックよ。充ち満ちて眩き光を携え給え。

 ●白日に照らす月の色。まぶしくまぶしく,生きることを脅迫するように照る月。静かの海に身を投げても,月灯りは,まぶしく強く。生きる意志を忘れたものに,月だけがいた。そんな,月灯りのような製品だと皆が云った。その製品をご覧にいれよう…。●「満月というのは,実のところ,天文学による恋愛なのだそうです」と科学者は云った。影無き二人,円と熟,冷淡と熱情の狭間。…さて,21世紀,最初の満月の夜を迎える日に幕を開けるマックワールドエキスポ/サンフランシスコ。発表は,そこだ。月よ,集めた光を,桑港へと向けよ。●




 
[2000.12.11]
  この世界の価値とあなたの価値


 ▼「ただ」ほど下らないものはない(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0012/06/e_berst.html


 「「ただ」ほど下らないものはない」としたら,Berst,君のコラムほどくだらないものはないことになるね。

 価値あるものに無料のものはない。無料インターネットアクセスや,企業向け無料サービスも減る一方だ。名を広め,目を引くための無料サービスだったが,それが最善の事業モデルではなかった。広告と個人情報による無料サンプルもあるが,さて,どの無料サービスが生き残るだろうか。

 もし,ナップスターが明日から,利用者「全員」から,たった1ドルでも料金を徴収することにしたらどうなるだろう。たった1ドルだ。それでも,利用者は激減するだろう。つまりは,そういうことだ。この世界には,リアルとは違う価値基準がある。MP3を100万曲手にしても1ドルも払わない人だっているし,逆に無名のコンポーサーの作るMIDIファイルにシェアを払い続けることもあるだろう。くだるものとくだらないものの判断をするのは,個人でしかなくて,権威やマスや大手ではない。だから,リアルとはほど遠い価値基準が必要となる。ZDNet内のMacWIRE ONLINEが,以前は有料メールマガジンだったことをおぼえている人も少ないだろう(過去記事)。スティーブン・キングのテキストに,金を払う人も,実際には少なかった(過去記事)。だが,それに目くじらをたてたいわけぢゃない。それが,この世界のデフォルトなのだ。

 そして,もうひとつ考えるべきことがある。自分にとって,価値があるものとは,いったいなんだろうかということだ。世界はおおむね,くだらない。金を払うに値するものなど,少なすぎる。ただ,自分にとって,価値のあるものも存在する。それを大切にする心も,私たちは持ち合わせているはずだ。情報は共有され,流通する。その中で,自分にとって大切なものを見つけていく。懇切なテキスト情報,胸に響く楽曲だけぢゃなく,金を払うに値するアングラ情報やアダルト情報だって,なんだっていい。それを見つけられるかどうか,は,あなたの価値が,この世界に,いるか,いないか,と同義なのだ。




 
[2000.12.09]
  赤いケーブルの魔法


 ▼九州電力、電力線によるネット接続実験(Impress INTERNET Watch)
  http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/1208/kyuden.htm


 ふと気付くと,すべての人が,赤いケーブルを胸元から発している。ふと見ると,地球上のすべての人が,その赤いケーブルを携えている。絶え間なく,太陽のフレアにも似た感情のパルスをそのケーブルに乗せて。

 九州電力は,低圧配電線を利用して,1Mbpsのインターネット接続サービスを提供する実験を12月から実施する。来年3月まで試験提供し,事業化を検討する。

 IPは実は結構応用力があり,いわゆる伝線であれば,いろいろなものに乗せることができる。電話線はもちろん,ケーブルテレビケーブル,光ケーブルなどの鋼線,無線のいろいろな周波数帯でも利用できるし,はたまた拡散を防いだ水を伝達体としたりもできる(実用にはほど遠いが)。もともとを考えれば,インターネットを電話線で行うのは,非常に“まれ”な方法なのだ(非効率極まりないことだし)。電線はほぼすべての家庭に引かれており,それを利用するというのは手っ取り早い。だが,電線はノイズが生じやすく一般的な利用は難しいとされていたが,そのノイズを除去する技術が開発され始め,九州電力のもその一端だろう。

 さて,私たちはなにでつながっているのかと,ふとケーブルを辿っていく。モジュラージャックが突き刺さる壁にぶつかって,その先に想いを馳せる。街中にはあまり電線が見当たらなくなった。おおむね地中に埋め込まれたのだろうが,そんな線だけですむわけがないな,と感じなくもない。ふと,自分の胸元から一本の赤いケーブルが何処へか繋がっているのに気付く。静電気に似たパルスを発しながら,その赤いケーブルは,はるかな海を越え,見知らぬ街を通り,人の住まぬ空想の丘を通りすぎていく。地の果てよりも遠くまで続く赤いケーブル,彼の人のもとまで,まだ見ぬ彼女のもとまで,このケーブルは地球に住む,いや宇宙のすむすべての者に繋がっている。…想いは,このケーブルを跳ね駆ける。




 
[2000.12.08]
  Der apfel tanzt


 ▼Appleの赤字はディーラーにとって道にある障害物(MacWIRE ONLINE)
  http://www.zdnet.co.jp/macwire/0012/07/n_dealer.html


 「林檎は踊る,それど林檎は進まず」。ジョブズに花束を投げ渡す,手袋屋の娘は,何処?

 アップル社は,2001年第1四半期に2億5000万ドルの損失を報告する予定だ。だがマック販売店はこの危機に対して,おおむね楽観的。キャッシュバックなどの販促は販売に貢献していると云う。ある再販業者は,CD-RW搭載機とアップルのCDライティングソフト,さらにマックOS Xに期待している。だがアナリストたちは一応に悲観的な観測をしている。

 そう云えば,以前はずっとこんな状況だったなと思い出す。あの時,アップルはやることなすこと空振りだらけ,ささいな動きも批評家に酷評され,ちょっとの黒字とたびたびの赤字というダッチロールの繰り返し。出るのは夢想的な予測ばかりで,好転する材料がなにもなかった。その時に比べれば,OS Xや,新しいプロダクトラインの噂(新型ノート,PDA,高クロックデスクトップ)が飛び交う現在は,希望のある時だ。だが,人は希望だけで生きていくことはできない。希望が現実になるその時までの生きる糧を,神は与えてくれないのだ。

 年末商戦に向けて商戦たけなわと思いきや,今年は秋口から個人向けのパソコンの売り上げが,ぱったりと止まってしまった。これはアップルだけの話ではなく,どのメーカーもおんなじ。そしてそれは,すでに危機感として現れており,PCメーカーは冷や汗をかきながら一斉に価格ダンピングを始めている(ZDNetショッピングの記事)。そう,アップルにとっては火に油,の状態なのだ。IBMやコンパック,デルなどは,サーバー製品や企業向けの販売物を持っているが(と云うよりそっちが主力),アップルにはパソコンしかない。ビーンボールがこめかみに思いっきりぶつかってきたようなものだ。ではどうするのか? 今四半期の赤字は織り込み済み,来期はとんとん,その次が本当の正念場となる。さて,踊り続ける会議に付きあうよりは,本物の愛持つ,「ただ一度だけ」,の新製品に身を投じたいが…。




 
[2000.12.06]
  ポルノ画像とメディア王の接点


 ▼ポルノ専用のナップスター型システムが登場(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20001205204.html


 メディア王の名を欲しがる者は多い。メディアを握るものこそ,世界の支配者だ。今,メディア王になる最短の近道のための道具が,2つある…。

 リーチネットと名付けられたシステムは,ナップスター同様のファイル共有を目的としているが,交換するのはポルノ画像だ。だが,このサービスを利用したユーザーは,児童ポルノ禁止,猥褻禁止,未成年者に対する猥褻画像提供禁止に関する米連邦法や各州法違反に問われる可能性がある。

 ああ,すげぇ(^_^;)。なんて直接的な使い方。ストレートすぎて思いつかなかった。ではさっそく試してみますかと思ったら,現在は一時的に停止中とのこと。WIRED NEWSをはじめとする報道でサービスの限界値を超えたらしい。ナップスターとは別の,独自のプロトコルを使っているようだが,記事にもあるように,ナップスターと比較したときのもろさはぬぐえない。

 ナップスターは,ベルテルスマン社との提携を受け(過去記事),現在MP3に限っている交換ファイル形式を,すべてのマルチメディアファイルに拡張することを決めている。それによって,すでに多くの新聞社,出版社,テレビ・ラジオ局を持っているベルテルスマン社は,全メディアをもっとも手元に引きつける企業としての立場を築き,DVDやCDを売るより1万倍は手軽に,メディア企業として君臨できると踏んでいる。そう,リーチネットをただのポルノ画像の交換サービスなどと侮る事なかれ。それがすすべての画像に繋がり,ムービーに繋がり,テキストに繋がっていく。アダルトというのはナップスター同様,アンダーグラウンドという媚薬としての効果は満点だ。明日のメディア王に必要なもの,それはファイル共有システムと,わずかな媚薬。ベルテルスマンが手に入れたもの同様,リーチネットは,そのツボにはまっている。




 
[2000.12.04]
  デジタルテキストの価値


 ▼スティーブン・キングの「オンライン断筆」から考える電子ブックの問題点(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0012/01/e_berst.html


 有料でテキストを売っているサイトがつぶれるのをみるのは何度目だろうか。しかも今度は,本が売れない時代に唯一売り物になっている,出版業界にとっては救い主とも云えるスティーブン・キングの失敗,だ。テキストの価値は,何処にありや。

 ホラー小説作家のスティーブン・キングは,自身のサイトで書簡体小説「ザ・プラント」をオンラインで自主出版していたが,物語が終わる前に中止すると発表した。電子ブックを読むためのデバイスの売り上げは低調で,電子ブックにある問題は多い。

 とても,残念なニュース。「ザ・プラント」は,8章立てで最初の3章が1ドル,残りの章が各2ドル。支払いは読者の良心に任せるという,いわばシェアウェアの小説版だった。サイトにはキングの言葉として「あなたがお金を払えば物語は続く,払わなければそこで物語は終わってしまう」とある(結局お金を払った人は46%だった)。物語は,8章のうちの6章ほどで終止符を打つ(6章は無料になりそう)。と云っても,説明としては,これはいったんお休みであって,1,2年後に再開されるとある。だが,どんな面白い小説であっても,結末を読むためだけに2年も待つ人はまれだろう。「プラント」は,枯れ果てたのだ。

 キングはこのオンライン出版のいちばんの目的として,現在の出版業界の外にいる無名のライターや,純文学作家などに,生活する糧を得る場所がある希望を与えられれば,と述べていた。悪く云えば中間搾取に過ぎない無能な編集者や出版社,取次を介すことなく,テキストを売買できるシステムがあれば,それを希望とできる人は多いだろう。…だが,失敗だった。そう,この場所はテキストを売り買いできる場所ではなかったのかもしれない。音楽のことばかりが取り上げられてきたが,テキストとて同じ。記事ではデバイスの話に終始しているが,それ以前に,コンテンツの売買という時点で,うまくいかないのだ。テキストを売り物にしたウェブサイト(ニュース系も含めて)で,まともにそれだけで収支が整っているところもない。私たちは,決して売り物にはならないデジタルなテキストを再認識すべきなのかもしれない。




 
[2000.12.03]
  魔笛は吹くや


 ▼Opera to fan the browser-war flames(ZDNet News)【英語】
  http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2659780,00.html


 IEという名の,夜の女王の森に迷い込む。救い出してくれた夜の女王の言葉から,女王の娘を略奪したザラストロの成敗に向かう…。だが,慣れてしまっていて気付かなかったが,ザラストロのもと,真の悪たる夜の女王を知り,試練に耐え,その悪を討ちに赴く。魔笛は吹くや,戦いの士に。

 来週,オペラ社は無料バージョンのウインドウズ用ブラウザ「オペラ5」をリリースするようだ。この無料バージョンは広告でサポートされる。オペラ社では,11月22日にビーOS用バージョン3.62と,リナックス用バージョン3をリリース。マック版はまだアルファ版だが,PPCと68K,マックOS Xをサポートする。EPOC用はバージョン3.62が出荷されている。

 そんな早く出すこともなかったのにとも云われるネットスケープ6は(CNET Japanの記事),日本語マック版もリリースされた(ftp.netscape.com)。それにしてもIEの普及はさらに広がっているようで(ZDNet Newsの記事),シェアは88.84%という。ネットスケープが11.13%,その他が0.03%というのは,ちょっと偏り過ぎな調査結果だが,全体的な傾向としては間違っていないのだろう。ウインドウズとマックだけしかサポートしない会社が,そんなシェアを持つこと自体,由々しきことではあるのだが。

 ようは惚れるより慣れろという感じでIEは幅を利かせた。そして,実際慣れるほうが効果が高い(^_^;)。OSという,慣れさせる手はずを持っているという時点ですでに勝ちなんだから,まともに戦いを挑むのは無謀であることの方が多い。だが,なんにつけ,善悪の基準なくして慣れてしまうのは駄目なことだ。オペラ「魔笛」では,王子が夜の女王を信じて悪たるザラストロのもとへ赴き,そして高僧であるザラストロを知り,夜の女王こそ絶対悪であることを確信する。1幕と2幕で善と悪が逆転するストーリーは,矛盾ととられることもあるほどだ。オペラ社を善という気もないし,MSを悪という気も面倒なのでない。だが,ユーザーは自分の判断を持つべきだ。判断を慣れに任せるのは,子供でもできる。まだまだ先に続くブラウザの開発ストーリーは,1幕とて終わっていないのだし。




 
[2000.12.02]
  携帯ゲームの道先


 ▼携帯型ゲーム機で独り勝ちを続ける任天堂(CNET Japan)
  http://japan.cnet.com/News/2000/Item/001130-6.html


 ゲームメーカーが世界一のネットワーク機器メーカーに変貌する。その現実味ある期待をかなえてくれるメーカーは,どこかな?

 任天堂は,ゲームボーイで米国の携帯ゲーム市場で95%のシェアを握っている。任天堂の幹部でさえ,「こんなに成功していいものかと感じる」と述べている。7月に発売される後継機のゲームボーイアドバンスは,任天堂の次世代セットトップ型ゲーム機「ゲームキューブ」と接続でき,相乗効果も見込める。他社もこの市場を狙っているが,追いつくのは並大抵のことではない。

 というか,ワンダースワンは「古色蒼然としたゲームと麻雀ゲームを中心にソフトウェアを揃えていることから,日本人に的を絞っているのは明らか」なのですか?(^_^;) バンダイのワンダースワンは,カラー発売を目前にめっきりと静かになっているが,発売と同時にためていた広告宣伝費の使いどころとなろう。だが,ワンダーゲート対応ソフトがかなり少なくなっており,先行きの不安感はぬぐえない。そしてそこにある,ゲームボーイの壁の高さは,諦念を起こさせてもおかしくないほど。設計思想はとてもしっかりしており,ワンダーボーグなどのギミックも目を引くものがあるのだが…。

 一時,ゲームボーイ一体型の携帯電話が出されるという報道もあったが(GAMESPOT JAPANの記事),それも鳴りを潜めた。誰もが,ゲームボーイをPDAに近い携帯情報端末として積極的に売り出せば,10年後まで食べていける飯の種になると思うのだが,任天堂はさらさらその気はないようだ。ゲームをしてもらえばそれでいい,ということか。そんなところは,ゲーム機としてダメダメならDVDプレイヤーでいいぢゃんと新型を出すソニーなどよりよほど確たるものがあってよいのだが(Impress PCWatchの記事),それでもこの携帯ネットワーク端末という市場は魅力的だ。各PCメーカーも制覇できず,iモードやパームは,小ささに固執してブラウジングやメールの機能がお粗末。そこにつけ入り,完全に制覇できるのは携帯ゲーム機ではないかという期待は当然だろう。まっ,任天堂がゲームメーカーの名を捨てるのは容易ではないと思うけど。




 
[2000.12.01]
  ギガヘルツマックのために必要なこと


 ▼PowerPC alliance to open up to competition?! (MacOS Rumors)【英語】
  http://www.macosrumors.com/


 ギガヘルツ・マックなんて諦めている? もし諦めていないのだったら,今すぐにできることはなんだろうか? もしかしたら,パワーPCを生み出した「親」を捨てることか? 親を殺して,子は育つ,という格言のように。

 信頼できる情報提供者によると,アップル社は,IBM社モトローラ社以外の新しいパワーPCチップの開発メーカーを探しており,そのための資金供給などを考えているという。これについてはアップル社内でも討論が続けられているが,2社による閉じられたチップ市場への依存からの克服を目指しているのは明確だ。

 AMDとインテルによる激しい競争により,爆走を続けるx86チップ市場に比べると,パワーPCの歩みは凍りついているかのように進んでいない。アップルでは,昨今の売り上げ減退の原因として,その遅々として進まないチップ速度「メガヘルツ・ギャップ」をあげている(過去記事)。ジョブズがちくりとモトローラを批判し(MacWIRE ONLINEの記事),モトローラは追い詰められている。だが,モトローラは優秀な開発陣の離職などもあり,開発スピードの回復は現状では見込めない。モトローラではあくまで予定として,来年1月に600MHz,春に命令パイプラインに変更を加えた新型G4で733MHz,秋口に800MHzと計画を立てている。すなわち,マックでギガヘルツマシンが出されることは,予定のさらに先,というわけだ。

 ジョブズのフラストレーションは,手にとるように感じられる。クロックスピードがすべてではないのは確かだが,コンシューマーにとっていちばんわかりやすい基準は,やっぱりそれ以外にないのだ。AMDも,トランスメタも,パワーPCに関心がないわけではない。ただ,今は多くに手を広げずに確かな成長を遂げたい気持ちが強いだけだ。しかし,モトローラはチップメーカーとして,現状では「終わっている」。だから代わりが必要なのだ。AMDやトランスメタの名前がアップル社内でやり取りされているのは,決して噂ではない。




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